使用貸借契約
弁護士の八木です。
今回は次の「売買契約」ではなく、貸借契約の一つ、「使用貸借契約」について触れたいと思います。
1 使用貸借契約は、実務上意外と登場する契約です。
賃貸借契約のところで、日本の住戸数のうち、35パーセントくらいが貸家であるとの指摘をしましたが、使用貸借契約の数はおそらく、その10分の1にも満たないのかもしれません
しかし、その契約があるおかげで救われる人も少なくない、という特殊な契約です。
2 例えば、期間を定めることなく、無償で建物を貸した場合、貸した人がすぐに建物を明け渡してほしい、と要求するとします。
しかし、借りた人にも生活があり、すぐに、というわけにもいかないし、そもそもほかに行くところがなければ、明渡はできれば回避したいというケースも存在します。
その際、使用貸借契約が成立し、かつ、存続することが主張できれば、長期間とは言えないものの、明け渡しを回避し、ある程度居住を続けることができる、という形にすることができます。
3 どのような場合に、明け渡しを逃れることができるのか。
⑴ 使用貸借契約が成立していること
さすがにそうでないと、明渡は拒めません。
⑵ 使用貸借の期限が到来していないこと
使用貸借契約を締結する際、期間を定めている場合は、その期間内は明け渡しを逃れることができます。
⑶ 期間を定めていない場合はどうか。即明け渡しとなるか。
ア 使用貸借の目的に従った使用収益が完了したのか
イ アの使用収益に足りる期間が経過したのか
という観点から判断されると言われています。
これは、使用貸借の合意をする場合、貸す期間を明確に定めて合意することは多くなく、むしろ、借主の、何らかの目的達成のために貸すこともあり、その場合、無償でもいい、という事が多いからです。
典型的な使用貸借の例としては、家を建て替える際、数カ月くらい別の家に家族で済む必要があるものの、アパートを借りるには期間が短すぎて不動産屋さんにも「そういう物件はない」と言われたとき。
「いつ終わるかは明確にわからないと思うけど、建て替え期間くらいならいいよ、勿論無償でね」ということで、お友達の持っている家の使用貸借契約を締結する場合です。
4 使用貸借権は相続されるのか
⑴ 相続事件では、被相続人が居住していた借家の扱いが問題になることがあります。
被相続人死亡により、使用貸借契約は終了するのでしょうか。
前回触れた通り、賃貸借契約は存続するのですが、使用貸借契約には、民法597条第3項に「使用貸借は借主の死亡により終了する」と定めがあるので、終了してしまいます。
そうしますと被相続人と同居する子や親戚の人は、その家を出ざるを得なくなるのですが、これで良いのでしょうか。
⑵ ここで被相続人との間で明確な合意「契約は終了しない」「同居の子が引き継ぐ」という内容の合意があれば、存続すると解釈されています。
条文で「終了する」って書いてあるのに、そういう合意っていいの?という疑問が浮かぶところですが、実は、このような条文の内容に反する合意が有効になる場合もあります。
民法597条第3項の定められた趣旨は「使用貸借、貸主の借主に対する厚意に基づく無償の合意であるから、その厚意の対象である借主が亡くなれば、貸主の合理的意思として契約が終了するのは当然」ということです。
なので当の貸主が「存続しても大丈夫だよ~。息子たちも住みなよ~」と借主に約束した場合、存続させても問題はないことになります。
このように、民法上で契約終了を定める条項があっても、その条項が、貸主の合理的意思を推測して終了させる、という趣旨で定められた場合、当事者の「存続する」という合意があれば、終了せずに存続させても良い、ということになります。
なお、そのような趣旨(貸主の合理的意思推測)ではなく、別の理由(公益的理由など)で契約終了を定めている場合、当事者が存続を合意した場合でも、それが有効とならないことがあるのには注意です。
⑶ さらに⑵の考え方を進めて、明確な合意がなくとも、被相続人と借主とが生前、黙示の合意をしていると認定できる場合は、同じく例外として使用貸借契約を存続させて良い、という判断もあります。
例えば、借主だけではなく、被相続人の子や親族も同居している場合、被相続人の子が,被相続人死亡後も居住をとがめられることなく、長期間居住していた場合、貸主による「黙示の」承諾があったものとして、期限の定めのない使用貸借契約が成立したものとします。
そして、いつ使用貸借契約が終了とするのかを判断するため、使用貸借に関する諸事情を考慮したうえで、建物所有の場合、「その目的に従った使用収益」がいつ終了したのか、又は、その使用収益に足りる期間が経過したのか、を検討することになります。
存続期間=永年ということですと、貸主の負担が大きすぎるからです。
5 実は使用貸借には、もっと問題があるのですが、本稿ではここまでにしたいと思います。
以上
今回は次の「売買契約」ではなく、貸借契約の一つ、「使用貸借契約」について触れたいと思います。
1 使用貸借契約は、実務上意外と登場する契約です。
賃貸借契約のところで、日本の住戸数のうち、35パーセントくらいが貸家であるとの指摘をしましたが、使用貸借契約の数はおそらく、その10分の1にも満たないのかもしれません
しかし、その契約があるおかげで救われる人も少なくない、という特殊な契約です。
2 例えば、期間を定めることなく、無償で建物を貸した場合、貸した人がすぐに建物を明け渡してほしい、と要求するとします。
しかし、借りた人にも生活があり、すぐに、というわけにもいかないし、そもそもほかに行くところがなければ、明渡はできれば回避したいというケースも存在します。
その際、使用貸借契約が成立し、かつ、存続することが主張できれば、長期間とは言えないものの、明け渡しを回避し、ある程度居住を続けることができる、という形にすることができます。
3 どのような場合に、明け渡しを逃れることができるのか。
⑴ 使用貸借契約が成立していること
さすがにそうでないと、明渡は拒めません。
⑵ 使用貸借の期限が到来していないこと
使用貸借契約を締結する際、期間を定めている場合は、その期間内は明け渡しを逃れることができます。
⑶ 期間を定めていない場合はどうか。即明け渡しとなるか。
ア 使用貸借の目的に従った使用収益が完了したのか
イ アの使用収益に足りる期間が経過したのか
という観点から判断されると言われています。
これは、使用貸借の合意をする場合、貸す期間を明確に定めて合意することは多くなく、むしろ、借主の、何らかの目的達成のために貸すこともあり、その場合、無償でもいい、という事が多いからです。
典型的な使用貸借の例としては、家を建て替える際、数カ月くらい別の家に家族で済む必要があるものの、アパートを借りるには期間が短すぎて不動産屋さんにも「そういう物件はない」と言われたとき。
「いつ終わるかは明確にわからないと思うけど、建て替え期間くらいならいいよ、勿論無償でね」ということで、お友達の持っている家の使用貸借契約を締結する場合です。
4 使用貸借権は相続されるのか
⑴ 相続事件では、被相続人が居住していた借家の扱いが問題になることがあります。
被相続人死亡により、使用貸借契約は終了するのでしょうか。
前回触れた通り、賃貸借契約は存続するのですが、使用貸借契約には、民法597条第3項に「使用貸借は借主の死亡により終了する」と定めがあるので、終了してしまいます。
そうしますと被相続人と同居する子や親戚の人は、その家を出ざるを得なくなるのですが、これで良いのでしょうか。
⑵ ここで被相続人との間で明確な合意「契約は終了しない」「同居の子が引き継ぐ」という内容の合意があれば、存続すると解釈されています。
条文で「終了する」って書いてあるのに、そういう合意っていいの?という疑問が浮かぶところですが、実は、このような条文の内容に反する合意が有効になる場合もあります。
民法597条第3項の定められた趣旨は「使用貸借、貸主の借主に対する厚意に基づく無償の合意であるから、その厚意の対象である借主が亡くなれば、貸主の合理的意思として契約が終了するのは当然」ということです。
なので当の貸主が「存続しても大丈夫だよ~。息子たちも住みなよ~」と借主に約束した場合、存続させても問題はないことになります。
このように、民法上で契約終了を定める条項があっても、その条項が、貸主の合理的意思を推測して終了させる、という趣旨で定められた場合、当事者の「存続する」という合意があれば、終了せずに存続させても良い、ということになります。
なお、そのような趣旨(貸主の合理的意思推測)ではなく、別の理由(公益的理由など)で契約終了を定めている場合、当事者が存続を合意した場合でも、それが有効とならないことがあるのには注意です。
⑶ さらに⑵の考え方を進めて、明確な合意がなくとも、被相続人と借主とが生前、黙示の合意をしていると認定できる場合は、同じく例外として使用貸借契約を存続させて良い、という判断もあります。
例えば、借主だけではなく、被相続人の子や親族も同居している場合、被相続人の子が,被相続人死亡後も居住をとがめられることなく、長期間居住していた場合、貸主による「黙示の」承諾があったものとして、期限の定めのない使用貸借契約が成立したものとします。
そして、いつ使用貸借契約が終了とするのかを判断するため、使用貸借に関する諸事情を考慮したうえで、建物所有の場合、「その目的に従った使用収益」がいつ終了したのか、又は、その使用収益に足りる期間が経過したのか、を検討することになります。
存続期間=永年ということですと、貸主の負担が大きすぎるからです。
5 実は使用貸借には、もっと問題があるのですが、本稿ではここまでにしたいと思います。
以上


