雇用契約
弁護士の八木です。今回は、「雇用」について触れたいと思います。
1 雇用契約は、民法上で重要な契約です。
国民の多数が労働者である日本において、雇用契約自体、重要な契約であることはもちろんなのですが、他の契約(特に請負、業務委託)との違いに注意する必要があります。
例えば請負契約のところで触れた「偽装請負」という現象は、雇用主が、雇用契約に基づく様々な義務を免れるための方便として出てきたことはすでに述べた通りです。
2 雇用の特徴について
雇用は、雇主の指揮監督命令に従い、特定の業務を遂行する、そして一定の基準により賃金の支払いを受けることを契約の内容とします。
請負、委任とは、他人の労務を利用する契約、と言う共通点はあるものの、その違いは、以前のブログで少し触れたこともあるのですが、以下の通りです。
ア 雇用
雇用主の指揮監督命令に基づき業務を行う
業務の完成について結果責任を負わない
時給制など、定められた一定基準で賃金を算定
→ 会社や個人事業主の従業員
イ 請負
発注者と請負人との間に指揮監督関係はない
業務の完成について結果責任を負う
請負業務の完成を予定した請負代金の設定
→ 家屋建築、シナリオの制作
ウ 委任
委任者と受任者との間に指揮監督関係はない
業務の完成について結果責任を負わない
業務継続を前提とした報酬の設定
→ ビル管理・清掃業務、コンサルティング
3 このように見てみると、請負や委任は独立した当事者であることを前提として典型契約の内容が定められております。
一方雇用契約は、労働者が雇用主の指揮監督命令に従う、という労働者の行動を制限する傾向が強い契約です。
近代以降、雇用主が強い経済力を有し、経済力の弱い労働者を雇用し、その労働者の労働力を「搾取」するという構造が出来上がってしまっていました。
なぜ「搾取」という構造になるのかは、多くの説明を要する事項と思いますが、簡単に申し上げれば、
「労働乃至労力自体を提供する形態の雇用契約で、しかも雇用主に労働者の指揮監督命令権があるという状況では、経済的格差のある労働者は、雇用主に行動だけではなく、人格そのものを不当に拘束されることが多い」
ということになるのだと思います。
現在の職場環境に置き換えてみますと
(以下、口さがない表現になることをお許しください)、
「どうしてこんなことができないのかな~?給料高すぎじゃない?」
「こんなこともできないなら、他の仕事なんて到底できないな!」
「ふーん、休むんだ。この時期に有給なんて取れると思ってんだ~?」
「ここ辞めたら、ほかに行くところないんじゃないの?」
などの雇用主(ないし雇用主から労働者管理を任された管理職)による発言が行われていたとのこと。
そして理由なき給料大幅カット、不当な配点替え、有給取るのを(自主的に)やめさせる、退職させないよう圧力をかける、といった、労働者にとって不利不当な行為が行われ、労働者の行動だけではなく、人格そのものまで不当に拘束される状況でした。
4 少し前置きが長くなりましたが、民法上の雇用契約の定めだけでは、以上のような労働者に対する不利不当な行為を完全に防ぐことはできません。
そこで、民法上の雇用契約の定めを前提として、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法など、労働に関する法律が別途成立・施行されております。
これにより、雇用契約における雇用契約の内容制限、雇用主の行為制限(特に解雇)、雇用主に対して雇用に関する要求をするための手段(組合結成、組合活動)確保、雇用主との関係調整手段確保が図られております。
そして以上にあげた職場環境は、労働基準法などの法制に基づき、労働基準監督署の介入などにより、職場環境が是正されていく流れができています。
5 そうしますと経営者の立場からは、
「雇用では制約が多すぎるし、社会保険に入らなきゃいけないし、コストパフォーマンスが悪すぎる」
という考えから、実際は雇用契約(ないし労働者派遣)の内容なのに、契約書は請負契約、と言う形で人を雇う、という現象も生じました(偽装請負)。
かかる偽装請負については、労働者派遣法により制限をかけるようにしております。
それ以外にも、
△ 単純に社会保険に加入していない
△ 給与金額(時給)が東京都の最低金額を下回っているのに引き上げない
△ 何か気に食わないことがあれば従業員をいじめる
などの、完全に法律を無視しているかのような行為も、いまだに行われていると言われています(以前よりは改善されてはいるとのことなのですが)。
我々弁護士は、かかる問題に対して、労働者、経営者、それぞれの立場で考察をし、よりよい解決方法を探っていくべきと思います。
以上
1 雇用契約は、民法上で重要な契約です。
国民の多数が労働者である日本において、雇用契約自体、重要な契約であることはもちろんなのですが、他の契約(特に請負、業務委託)との違いに注意する必要があります。
例えば請負契約のところで触れた「偽装請負」という現象は、雇用主が、雇用契約に基づく様々な義務を免れるための方便として出てきたことはすでに述べた通りです。
2 雇用の特徴について
雇用は、雇主の指揮監督命令に従い、特定の業務を遂行する、そして一定の基準により賃金の支払いを受けることを契約の内容とします。
請負、委任とは、他人の労務を利用する契約、と言う共通点はあるものの、その違いは、以前のブログで少し触れたこともあるのですが、以下の通りです。
ア 雇用
雇用主の指揮監督命令に基づき業務を行う
業務の完成について結果責任を負わない
時給制など、定められた一定基準で賃金を算定
→ 会社や個人事業主の従業員
イ 請負
発注者と請負人との間に指揮監督関係はない
業務の完成について結果責任を負う
請負業務の完成を予定した請負代金の設定
→ 家屋建築、シナリオの制作
ウ 委任
委任者と受任者との間に指揮監督関係はない
業務の完成について結果責任を負わない
業務継続を前提とした報酬の設定
→ ビル管理・清掃業務、コンサルティング
3 このように見てみると、請負や委任は独立した当事者であることを前提として典型契約の内容が定められております。
一方雇用契約は、労働者が雇用主の指揮監督命令に従う、という労働者の行動を制限する傾向が強い契約です。
近代以降、雇用主が強い経済力を有し、経済力の弱い労働者を雇用し、その労働者の労働力を「搾取」するという構造が出来上がってしまっていました。
なぜ「搾取」という構造になるのかは、多くの説明を要する事項と思いますが、簡単に申し上げれば、
「労働乃至労力自体を提供する形態の雇用契約で、しかも雇用主に労働者の指揮監督命令権があるという状況では、経済的格差のある労働者は、雇用主に行動だけではなく、人格そのものを不当に拘束されることが多い」
ということになるのだと思います。
現在の職場環境に置き換えてみますと
(以下、口さがない表現になることをお許しください)、
「どうしてこんなことができないのかな~?給料高すぎじゃない?」
「こんなこともできないなら、他の仕事なんて到底できないな!」
「ふーん、休むんだ。この時期に有給なんて取れると思ってんだ~?」
「ここ辞めたら、ほかに行くところないんじゃないの?」
などの雇用主(ないし雇用主から労働者管理を任された管理職)による発言が行われていたとのこと。
そして理由なき給料大幅カット、不当な配点替え、有給取るのを(自主的に)やめさせる、退職させないよう圧力をかける、といった、労働者にとって不利不当な行為が行われ、労働者の行動だけではなく、人格そのものまで不当に拘束される状況でした。
4 少し前置きが長くなりましたが、民法上の雇用契約の定めだけでは、以上のような労働者に対する不利不当な行為を完全に防ぐことはできません。
そこで、民法上の雇用契約の定めを前提として、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法など、労働に関する法律が別途成立・施行されております。
これにより、雇用契約における雇用契約の内容制限、雇用主の行為制限(特に解雇)、雇用主に対して雇用に関する要求をするための手段(組合結成、組合活動)確保、雇用主との関係調整手段確保が図られております。
そして以上にあげた職場環境は、労働基準法などの法制に基づき、労働基準監督署の介入などにより、職場環境が是正されていく流れができています。
5 そうしますと経営者の立場からは、
「雇用では制約が多すぎるし、社会保険に入らなきゃいけないし、コストパフォーマンスが悪すぎる」
という考えから、実際は雇用契約(ないし労働者派遣)の内容なのに、契約書は請負契約、と言う形で人を雇う、という現象も生じました(偽装請負)。
かかる偽装請負については、労働者派遣法により制限をかけるようにしております。
それ以外にも、
△ 単純に社会保険に加入していない
△ 給与金額(時給)が東京都の最低金額を下回っているのに引き上げない
△ 何か気に食わないことがあれば従業員をいじめる
などの、完全に法律を無視しているかのような行為も、いまだに行われていると言われています(以前よりは改善されてはいるとのことなのですが)。
我々弁護士は、かかる問題に対して、労働者、経営者、それぞれの立場で考察をし、よりよい解決方法を探っていくべきと思います。
以上
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