不法行為について
不法行為について
弁護士の八木と申します。
今回のテーマである「不法行為」(民法第709条)というのは、弁護士をしていると、なかなか避けては通れない請求事件の一つだと思います。
我々が依頼者の方から、相手方に対する金銭請求を依頼される場合、真っ先に考え、かつ依頼者の方にお聞きしたいのが
「相手方との契約関係」
です。どういう契約に基づいて、金銭請求できる形かを聞きたいところです。
簡単な例で申し上げると、売買契約に基づいて、モノは渡したんだけどカネを払ってくれない、という例。
だとすれば、売買契約に基づく売買代金請求をすればいいな、と。
こういった形で事件に関する内容整理を進めていくのが弁護士の基本姿勢なのですが、そういった「契約関係」がない場合の依頼もあります。
その一つが、今回のテーマ「不法行為」。
例えば、Aが街を歩いていて、いきなりBに襲われて殴られてAが怪我した場合、Aの怪我により生じた損害をBは賠償する責任を負う、ということになります。
このような場合、契約関係もへったくれもありません。
この「不法行為」事件で一番困るのは、そもそも暗がりで相手の顔を覚えてないとか、殴られたは殴られたんだが、詳細を覚えていないとか、そういう場合です。
内容がある程度決まっている契約の場合と違い、今回殴られた側(A)が、その不法行為時の状況を改めて明らかにする必要があります。
しかし肝心のご本人さん(A)の記憶が定かでない場合、相手(B)が誰だかわからない、相手(B)の存在がわかっても、内容が不明瞭なので、何の行為についての責任をBに問えばよいのかわからない、という事態に陥ることがあります。
そういう場合、ご本人(A)の記憶喚起、現地での目撃者捜索が重要になるわけです。
実際の話をしますと、例で挙げたケースの場合、警察が傷害事件として扱ってくれるならば、警察の捜査により、ある程度事実関係は明らかになることがあります。
ただ傷害の程度などから、警察が介入しない事件の場合は、自らの力で証拠を集めて、相手を探し出して、相手に事実を突きつけるしかないわけです。
このように「不法行為」に基づく請求依頼は、色々大変なことが多いのですが、何よりも、不法行為により受けた損害は、契約トラブルにより受けた損害よりも精神的なダメージが大きいことが多いです。
路上でいきなり殴られる、自転車に轢かれるなど、普通の生活やビジネスでは考えられないことにより、身体、精神にダメージを負うからです。
そういった事件において、弁護士は依頼者さんの傷ついた心に配慮しつつ、不法行為に基づく損害賠償請求事件の解決を目指していくことになります。
以上


